DAF技法

遅延聴覚フィードバック(Delayed Auditory Feedback 以下DAF)とは、自分の発した声のフィードバックを人工的に遅らせるもの。
これを使うと、ふつうの人でも音の繰り返しやブロックなど顕著な非流暢性(人口吃音)が出現されます。
一方、吃音者がこれを使うと、吃音が消滅します。(DAF使用中のみ吃音消滅。)また、DAFを一定時間(期間)使用し続けていると、DAFをはずしてもDAFの効果が残ります(DAFの残効)。
ちなみに私は大学生の頃、某民間の吃音矯正所でこれを購入しました。最近は携帯用もあるようです。

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DAF技法の実際の効果

下記は「吃音の診断と指導」飯高京子・若葉陽子・長崎勤編集 から、一部を抜粋しました。※携帯用DAFの片耳装用における14名の実験のうち、3名のケースをあげてみました。

【ケース1 21歳 女】

吃音の特徴 6歳ごろ発吃。小学生のときがひどかった。現在は会社勤務。電話対応で吃りやすい。
DAFの片耳使用 遅延時間0.1秒、右耳装用(携帯用DAF)。毎日常用、1か月間。
本人の感想 最初の語音がスムーズにでるようになった。左耳より右耳の方がよい。電話も右耳を使うため、本機器を右耳に装用したままでは電話をかけれない。
検者の所見 ブロック型の吃音であり、本機器でこれがかなり改善された。

【ケース2 23歳 男】

吃音の特徴 5歳ごろから発吃。小、中学生の時期が最もひどかった。これまで種々の訓練を受けたが、よくならない
DAFの片耳使用 遅延時間0.1秒、右耳装用(携帯用DAF)。毎日常用、1週間。
本人の感想 早口にブレーキがかかる感じ。
検者の所見 ほとんど変化なし。遅延時間を0.2秒にすると吃症状は顕著になる。左耳でも両耳装用でも変化なし。

【ケース3 25歳 男】

吃音の特徴 4歳ごろ発吃。ひどい難発性で、発語に際して付随運動(右手を頻回に振る)が目立つ。
DAFの片耳使用 遅延時間0.05秒、右耳装用(携帯用DAF)。毎日常用、2週間。
本人の感想 少しは良い。しかし積極的に用いるほどでもない。
検者の所見 発語は多少スムーズになるが、特に有効とはいえない。

検者(言語聴覚士)の所見のまとめ

(1)携帯用DAFは重度吃音児(者)に有効と思われた。
(2)小学生低学年に有効な例が比較的多いようにであった。
(3)DAFは有効であっても、使用後はすぐに元に戻る場合が多かった。
(4)有効性に耳の左右差はないようであるが、一部に右耳装用がよいという例があった。
(5)吃音者の3分の1ぐらいに適応可能と思われた。

DAFの歴史

1950年、リー(Lee,B,S)が、自分の話し声を0.1~0.2秒ほど遅らせて自分の耳に聞かせると、話し方がちょうど吃るようにつまづきがちになることを発見(人口吃音のこと)。それ以来、聴覚と発語の関係に興味が集まり、遅延聴覚フィードバックと称して、多くの研究がされるようになる。

DAFと吃音

1951年、リーは吃音者にDAFを用いると吃らなくなることを知った。1956年、ストロムスタ(Stromsta,C)は吃音と骨導と気導の聴覚フィードバックにわずかな時間的差異があるために起こるのだろうと推察。1952年、アジ(Azzi,A)も吃音者の聴覚フィードバックは正常者と行っていると考え、吃音の原因に神経回路異常説をあげている。このように、DAFは吃音と関係が古く、吃音の原因究明に役立つと同時にその治療にも応用できることがわかった。

DAFの研究と実験

リー(Lee,B,S) 「吃音は発語の過程における知覚的モニターに欠陥があるのではないか」と考えた。
ウォルフ(Wolf,A.,a) 「吃音は聴覚フィードバックの機構に固有の不安定性がある」と考えた。
ネッセル(Nessel,E) 「正常者にDAFで文章朗読をやらせると、発語速度が遅くなり、読み誤りが増加することに対して、吃音者の多くは、このようなDAF効果が少ない」
ロッツマン(Lotzman,G) 「DAFで吃音が減少するのは、遅延時間が0.05~0.1秒のとき」
「文章朗読が最もスムーズになるのは、遅延時間0.05秒のとき」
「重度吃音者では遅延時間0.05~0.2秒のとき」
「軽度吃音者では遅延時間0.05~0.1秒のとき」
ニーレイ(Neelley,J.M) 成人男性23名と吃音者23名にDAF(遅延時間0.14秒)で文章朗読テストを施行した結果、構音の誤りは両者に差はないが、語音の付加は吃音者に有意に少なくなっている、と報告。
チェイス(Chase,R.A) 30名の吃音者でDAF効果を検討したところ、10名は吃音の頻度が著しく減少し、10名は話し方が流暢になり、残る10名は逆に吃音がひどくなった、と報告。
ゾーデルベルグ(Soderberg,G.A) 吃音者がDAFを長時間使用すると、発語速度を遅くしてゆっくり話すパターンが確立し、吃音の頻度は著しく減少する。そしてDAFを取り去った後、しばらく発語速度は遅いが、だんだん普通の早さにもどり、吃音はよくなる。
アダムチェック(Adamczyk,K) 15名の吃音者に週5回、1回30~40分間のDAFによる言語訓練を3か月行ったところ、13名は著明に改善し、2名は軽くなった、と報告。